June 28, 2006

Johnny Cash 『At San Quentin』

Johnny_cash_1数年前までは、日本でカントリーというと、C&W(カントリー&ウエスタン)や昔のダサい音楽というイメージが強かったと思う。しかし、近年は<スワンプ>やら<フォーキー>やらの人気、そして、何よりもグラム・パーソンズの影響で、カントリーという音楽もずいぶんと認知されてきたようだ。

しかし、何かが違う。
日本人の場合、どうしても<音>から入る傾向がある。まぁ、英語が苦手な日本人。それは仕方ない。オレもそうだし。オレは超がつくほどグラム・パーソンズの大ファンだし、エミルー・ハリスを知ったのはもう20年も前の高校時代だった。だからカントリーには最初から抵抗はなかったし、ポツポツと買ってはいたのだが。

At_san_quentin_1Johnny Cash 『At San Quentin』






でも、カントリーという音楽の本質はそこじゃない。このCDを聴いて思い知らされた。
ジョニー・キャッシュが1969年に行った刑務所慰問ライヴのコンプリート版。
刑務所慰問ライヴ自体は珍しいもんじゃない。B.B.キングなんかもそういうアルバム出してるよね。
ここで聴けるサウンドはシンプルそのもの。耳の肥えたリスナーには、音だけなら退屈といわれても仕方ないかもしれない。カントリーにもいろいろ種類はあって、ナッシュヴィルの音だ、ベイカーズフィールドサウンドだ、ウッドストックだ、とかそんなのはどうでもいい。ここにはシンプルな3コードの曲に力強い歌があるのみ。それがなぜこんなにも激しく感情を揺さぶるのか。それは、やっぱり歌詞なのだ。

このライヴが行われたサン・クエンティンという刑務所は、全米でも特に指折りの犯罪者が集めれた刑務所だという。
そんな場所で、受刑者を目の前にして、

「サン・クエンティン、いったい何の役にたってるのか
 刑を終えたら、生まれかわってるとでも思うのか
 おまえなんか朽ち果て地獄の業火に焼かれてしまえ!」

Cash_fuck_1と歌う。
この瞬間の受刑者たちの熱狂ぶりは、CDにも刻みこまれている。ライナーノーツにも書いてあるが、それは、今にも暴動が起きそうなほどだったという。しかし、それは決して受刑者の味方であるとか、犯罪を賛美したりとかいうわけではない。
ジョニー・キャッシュ自身、7度もの投獄経験があるだけに、受刑者の気持ちがよくわかるのだろう。それを代弁しただけだ。だから、彼の歌は、最初はカントリーに興味がなかったという受刑者たちをも熱狂させたのだ。
彼の音楽には、ものすごいカリスマ、人間としての巨大な器が刻み込まれている。それを理解するためには、歌詞をひもといていくしかない。

残念ながら、日本ではジョニー・キャッシュの偉大さは全く知られていないし、彼の伝記映画「I WALK THE LINE」も、アメリカでの大成功とうらはらに、それほど話題になっていない。
それでもその映画化を記念してか、日本でもこうやって彼の代表作がCD化された。そして、歌詞、対訳とともに、ライヴ中のMCまでがすべて記載されている。これらを読みながらこのCDを聴く事により、なぜジョニー・キャッシュが偉大なのか理解できるだろう。

レイ・チャールズは、「歌詞のストーリー性が人を感動させるんだ」と、カントリーミュージックの本質を見事に言い表した発言をしているが(映画「Ray」の中にも出てくる)、カントリーの本当のすごさはまさにそこにある。
パンク・ロックがいかに過激なことを歌っていようとも、プロテスト・ソングがどんなに過激な政治的メッセージを放とうとも、普通の日常の中で普通に人殺しの歌と美しい愛の歌と賛美歌を同居させて歌ってしまうカントリーには勝てっこない。

今、歌詞と歌の力というものを見直すときが来ていると思う。


■関連盤

At_folsom_prisonJohnny Cash 『At Folsom Prison』

これが初の刑務所慰問ライヴ盤。
こちらも名作。




Essential_johnny_cashJohnny Cash 『The Essential Johnny Cash』

Columbia時代の2枚組ベスト。




Walk_the_line
『Walk The Line』

実はまだ見てません。早く見よう。

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June 01, 2006

AYUSE KOZUE(鮎瀬梢)

やっべぇ。
ちょーかわいいんですけど!

オレの中では、2006年上半期のブライテスト・ホープは、この鮎瀬梢に決定! 歌えて踊れて作詞作曲ができてアレンジができてDTMでトラックが作れておまけにアイドル並みのルックス! しかも、作品のクオリティがハンパない。 ちょっと出来過ぎだね。

実は彼女、中学時代くらいからB級アイドルとしていろいろ活動をしてきたキャリアを持ってる。そう、再デビュー組なんですね。 2001年にselfish ARTというグループを結成。2004年には「Up To You」というシングルも出してるみたいだけど未聴。昔からそのルックスに加え、歌やダンスも評価されていたみたいです。


BoyfriendAYUSE KOZUE 「boyfriend」





3ヶ月連続シングルリリースの第1弾。プロデュースは、タイトルトラックの「boyfriend」がTEI TOWA、C/Wの「C.M.M.」がSTUDIO APARTMENT。 STUDIO APARTMENTの2人は、「デモテープをもらった時点で完成度が高かったので、自分たちがやることはほとんどなかった」と言っていた。

あとね、プロモクリップがすごくいい。 彼女のふわふわした人柄(本人に会ったことはないが、頻繁に更新されている彼女のブログを見ると、なんとなくそのキャラがわかる)をうまく捉えつつ、CGを逆説的に活かした見事な作品。これは必見でしょう。 AYUSEさんも写真でみるよりもぜんぜんかわいいし。 篠原涼子と井川遥の中間といったらホメすぎか?


Pretty_goodAYUSE KOZUE 「Pretty Good」





デビューシングル「boyfriend」が変則2STEPという感じの曲だったのに対し、この2ndシングル「Pretty Good」はもう少しR&Bのテイストを濃くした好チューン。 C/Wの「プレゼント」(こっちはもっとR&B丸出し)と共に、So'flyのGiorgio Cancemiがプロデュース。 そう、このGiorgio氏は多国籍軍ヒップホップグループ、Delighted Mintのメンバーだった人。 このR&Bテイストはその影響かもね。

「Pretty Good」は日常の何気ない小さな幸せを歌った曲。 「boyfriend」もそうだったが、AYUSEさんの歌詞は、身近でいて何か聴く者をホッとさせてくれるようなほんわかした雰囲気がある。でも、トラックはビシバシに切れまくってる、と。 AYUSEさんのセンスのいいところは、音の抜き方を知ってるところ。 必要な音を必要な分だけ適材適所に配置できる。 これって結構難しいことだよ。

個人的には「boyfriend」よりも「Pretty Good」の方が好きかも。 プロモクリップもやっぱり良かったですが、こちらは「boyfriend」に軍配かな。 ジャケの写真はもうちょっとかわいく撮ってあげようよー。


AYUSE KOZUE 「君の優しさ」

ジャケはまだ未着ですが。m-floのタカハシタクのプロデュースときけば、バリバリのクラブチューンかと思いますが、これがなんとミディアムバラード。今までサウンド重視であまりフィーチャーされてこなかったあゆせさんのヴォーカルが堪能できます。声量はちょっと弱いかなーって気がしないでもないけど、その歌い回しを聴く限り、なかなか歌えそうです。R&Bの感覚がちゃんとある。

「boyfriend」の12インチがCISCOのチャートで1位になったとか(まず仕込みでしょう)、その他もろもろのプロモーショントークを聞く限り、ハイプな匂いがプンプンするんですが、そういうのを抜きにしても、この子はけっこういいと思うなぁ。苦労人だしね。オレは応援しちゃいます。


最後に、selfish ART時代の画像でも。

Selfish_art_01

Selfish_art_02

Selfish_art_03

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小沢健二 『犬は吠えるがキャラバンは進む』

The_dogs_bark小沢健二 『犬は吠えるがキャラバンは進む』





Dogs小沢健二 『dogs』

タイトル、ジャケットが変更されての再発盤。


何で今頃こんなアルバムを取り上げるのかというと、この小沢健二のファーストソロアルバムは、攻撃的な言葉が並ぶ曲が多いのに、なぜか心安らぐ不思議なアルバムだからだ。
今のオレはまさにそんな気分。


Ozawa_2このアルバムにはリアルタイムで聴いていないと分からない要素がたくさんある。
必要以上に音数をそぎ落としたタイトな音作り。
アメリカ南部へ回帰するような土の香り。
そして、"神様"と"太陽"という言葉。
これらはフリッパーズ・ギター時代の自分に対するアンチテーゼであり、今の(当時)彼の立ち位置を明確にする意図があった。表向きは。
小沢本人は否定するかもしれないが、実はこれらの言葉はダブルミーニングになっている。
そう、元・盟友の小山田圭吾へ"NO"を突きつけているのだ。

小沢よりひと足早くコーネリアスとしてソロデビューを果たした小山田のデビューシングルは「太陽は僕の敵」だった。
サウンドいも、当時全盛だったいわゆる渋谷系の王道(を超越していたが)と呼べるものだった。
小沢はアコギやバタースカッチのテレキャスを武器に、小山田のすべてを否定した。
もし、あなたがヒマを持て余しているなら、このアルバムとコーネリアスの1stアルバム「The First Question Award」の歌詞を比較してもらいたい。
嫌になるほどの暗喩の向こう側に、朝まで生テレビでも解決できないほどの高い討論の壁が待っているはずだ。

と、そんなことは今はどうでもよくって。
暗喩を無視して、このアルバムの歌詞を見てみると、あまりにも露骨に過去を捨てて前に進もうとしている彼の姿が見えるはずだ。
もちろん、そのSweet Machinegun Talkは止まりそうもないけど、それでも「ありとあらゆる種類の言葉を知って何も言えなくなるなんてそんなバカな過ち」(「ローラースケートパーク』)はしていない。
過去の皮肉な言葉たちは季節を表現するような美しい比喩に姿を変えて、罪を洗い流していく涙のように人の心に降り注いでいく。
「天使たちのシーン」は、祈りを捧げる人々が通り過ぎて来た小さな情景を短編小説のようにまとめあげた名作だ。
ほんの短かな4行詩に描かれた主人公たちは、今も世界のどこかで密やかにその続きを営み続けている。

このアルバムがリリースされた時、タイトルは『犬は吠えるがキャラバンは進む』だった。
そこに小沢自身が<蛇足>といいつつ寄せたセルフライナーノーツに記されていた言葉。

「どうかこのレコードが自由と希望のレコードでありますように」

それを決めるのは小沢自身じゃない。僕たちなのだ。
だから、このアルバムは今でも、そしてこれからも名作でありつづけることができるのだ。
もう1つ、先のライナーから引用すると、「ある友達の女の子が出来たばかりのこのアルバムのカセットテープを聴いて、何かゴスペルみたいね、と言った。」
そうかもしれない。
でも、このアルバムはゴスペルである必要すらない。
なぜなら、「祈り」のアルバムだからだ。

神様を信じる強さを僕に
生きることをあきらめてしまわぬように
にぎやかな場所でかかりつづける音楽に
僕はずっと耳を傾けている
(「天使たちのシーン」)


■関連盤

First_question_awardCORNELIUS 『First Question Award』

あらゆる面で小沢のソロと対極的だった小山田。とはいえ、内容はさすがとしかいいようのない名盤。

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Destiny's Child 『Live in Atlanta』

Destinys_child01

Destinys_child02

デスチャ2枚目のライヴDVD。
『#1's』のおまけDVDのあたまのところで、「Coming Soon!」と紹介されて、予告編かよ!とガッカリさせられた(ちゃんと確認しなかった自分が悪い)作品が漸くリリースです。

Live_in_atlantaDestiny's Child 『Live in Atlanta』

DVDのみの輸入盤はコチラ




前作の『World Tour』の出来が良かっただけに、さらに磨き上げられたパフォーマンスを期待しながらDVDをセット。しかし、日本公演では、ビヨの一人舞台だったとの話も聞く。個人的には、ビヨはソロよりもグループの中でこそ力を発揮するタイプだと思っているので、本音は期待半分、不安半分といったところ。

ステージセットは、凝っていながらもしっかりメンバーに視線がいくようになっているあたり、かなり計算された感じがする。しかも、微妙にイナタいギミックが使われているあたり、これが南部気質なのかと微笑ましくなる。衣装替えも多く、視覚的にもかなり楽しめる。
「Cater 2 U」で観客の男をステージに上げ、手玉に取るようにあしらうパフォーマンスには、その貫禄にさすが!と思う気持ちと、その色気に芯棒玉乱という気持ち、あまりにもベタなアクションに苦笑いな気持ち、ちくしょー羨ましいぞって気持ちと、いろいろ入り乱れてわけわからんです(笑)
しかし、ケリー、やりすぎだから! ビヨに拾われた男、舌をペロペロやるの止めなさいって! 気持ちは分かるけど・・・。

肝心の歌は、もうさすがとしかいいようがなく、これホントにライヴ録音なの?といいたくなるほど上手い。もちろん、差し替えも行われているだろうけど(たぶん)、アフレコは『World Tour』の時よりも控えめな印象。それだけ個々のスキルが向上しているんでしょう。恐るべし。デスチャは最先端の音作りをしているようで、ベースにあるのはオーソドックスなヴォーカルグループのマナーだから、スタジオ録音の打ち込みサウンドよりも、ライヴで生バンドをバックに歌ってるときの方がヴォーカルの魅力が活きている。だから、スタジオ盤をあまり聴かないで、ライヴ盤(DVD)ばっか見ちゃうんだよね。

ちょっと不満なのは、メドレーが多く、途中にダンサーのシークェンスなどが挟まれて、流れが細切れになっている印象が強いこと。生で見てるとすごく楽しい構成だと思うけど、DVDでじっくり見るとちょっと物足りなく思うところも。もっと歌をじっくり聴かせるパートがあってもよかったかなと思う。

さて、先にも書いたビヨの一人舞台という話だが、確かに『World Tour』の時よりもビヨをフィーチャーした構成になっているのは確かだけど、オレにはミッシェルの一人勝ちに見えた。
『World Tour』の時は遠慮がちというか、まだまだ歌もパフォーマンスも硬かったミッシェルだが、ここではビヨとケリーを立てつつも、自分が前に出る場面ではものすごい存在感を発揮するようになっている。歌も(デスチャに加入するくらいだから上手いのは分かっていたが)ここまで歌えるのか!と驚くほどの熱唱ぶり。特に、ソロ曲では、往年の大物レディソウルを思わせる正統派のパフォーマンスを披露。オーラ出てます。この急成長の加速度は、ビヨやケリーを上まるものだろう。これでミッシェルの将来は見えたね。揺らぎはないと思う。

ケリーは相変わらずの2番目キャラというか、ソロの時くらい客を煽ってないでしっかり歌いなさいっての。ちょっと余裕をかまし過ぎて油断してるかなって感じ。最もオーソドックスなソウル声をしてるんだし、歌もすごく上手いんだから、もっとケリーの歌をじっくり聴きたいと思ってるのはオレだけじゃないはず。個人的にはケリーがいちばん好きなもんで。実はルックスもいちばんいいんだし(というのは、ひいきの引き倒しか?)。すっぴんでいちばんかわいいのはケリーのはず!と言っておこう。

ビヨはちょっと不調気味。いつもの女王様オーラがあまり出ていない。グリグリのこぶしもいささか控えめ。お疲れ? 
ソロになってからのビヨってどうも中途半端な印象があって。ビヨって曲やトータルでのプロデュース能力はすごいけど、こと自己演出という部分に関しては得意ではなさそう。その証拠に、「Crazy In Love」では、デスチャの一員としてのソロ・パフォーマンスではなく、独立したソロステージの世界を持ち込まなくてはいけなかったあたり、現時点での限界が見えてしまっているような気がする。

こうやって考えてみると、解散の理由がよくわかる気がする。
でもねー、解散しないで、普段はソロでやりつつ、やりたいときだけ集まるジェネシス方式(笑)でもよかったんじゃないかと。やっぱりケジメなのかな。

と、悪いことばかり書いてしまった気もしますが、それはこのクオリティーの高さがあってのこと。普通ならスタジオレコーディングやプロモクリップでこのレヴェルにたどり着けるかどうか。やっぱり並のグループじゃないですよ。

Bryan_tanakaちなみに、<TANAKA>とでっかく名前が出たことでミョーに人気のダンサーのTANAKAさんですが。日本人だと思ってる人もいるようですが、BRYAN TANAKAさん、 ハーフです。実はiPodのCFで踊っているのがこの人。向こうでもけっこう人気のある人みたいですね




Ipod_cmコレです。知ってますよね。クリックでCFが見られます






関連盤

world_tour『Destiny's Child World Tour』『Survivor』の後のワールドツアー、オランダのアムステルダム公演を収録したもの。グループとしての勢いならこっちが上か?



the_platinum_on_the_wall『The Platinum On The Wall』
プロモクリップ集。こういうのあんま好きじゃなくって。買ってません。





1s『#1's』(DVD付き初回盤)
『#1's』(通常盤)

<落とされた>とはいえ、やっぱほしくなるのはDVD付き。

Live_at_wembleyBeyonce 『Live At Wembley』

圧巻のソロステージ! なんだけど、デスチャに比べると何か物足りないような気も。


『#1's』の時に書いた記事はコチラ

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Ike & Tina Turner 『Too Many Ties That Bind』

ずっと探していたCDをやっと入手! 
コンディションはそこそことはいえ、1000円! らっきー。

Too_many_ties_that_bind_1Ike & Tina Turner 『Too Many Ties That Bind』




入手困難な作品が多いアイク&ティナですが、特に69年のMinit時代以降の音源はCD化されても同じような選曲のベスト盤が多く、思ったよりも入手困難な音源が多い。特にシングル・オンリーの音源に名曲が多いこともあって、ファンは相当ヤキモキしているはず。

このCDは、Minit〜Liberty、そして活動停止まで在籍したUnited Artistsの音源、中でも(ロックのカヴァーは多いものの)アイク&ティナが最もストレートなソウルミュージックに近付いた時期である69年〜72年のシングル曲を中心に収録。オリジナル・シングル以外ではこのCDでしか聴けないものがあり非常に貴重ですが、このCDですらすでに廃盤になって久しい。

特に嬉しいのは、Minit時代にリリースされた4枚のシングルで、このCDにはA/B面合わせて7曲が収録されているが(残りの1曲は「I Wanna Jump」。ほかのコンピレーションで現在も入手可能)、うち「Too Many Ties That Bind」と「Treating Us Funky」はこのCDでしか聴けない。また、「I'm Gonna Do All I Can」と「With A Little Help From My Friends(のスタジオ録音)」も1度ずつほかのCDに収録されたことがあるが、現在では入手は難しい。UA時代に入ってからの「Tracks In My Shoes」はアイクのソロ・アルバム「Blues Roots」、「Let Me Touch Your Mind」は同名オリジナル・アルバムに収録されているが、どちらも未CD化のためやはりここでしか聴けない。「I'm Yours」「Games People Play」「Help Me Make It Through The Night」の3曲もCD化されたことはあるものの、廃盤になって久しかったり、よくわからない廉価盤レーベルからのリリースだったりで入手は難しそうだ。ちなみに、「River Deep Mountain High」もPhilles/A&Mからリリースされたものとは違う再録ヴァージョンだ(ほぼライヴと同じアレンジ)。

レアリティばかりを煽っても仕方ないので、曲について書いていく。
Minitからの第1弾シングルである「I'm Gonna Do All I Can / Too Many Ties That Bind」はストレートなサザンソウル・スタイルで、ファンの間でも特に人気が高い作品。「I'm Gonna Do All I Can」はカントリー系の白人ソングライターの曲だが、サザンソウルとカントリーの相性の良さは周知の通り。個人的にもアイク&ティナの曲でベスト3に入るほど好きな曲。「Too Many Ties That Bind」はモロにサム・クックの「A Change Is Gonna Come」のパクリなのだが、出来はいい。このCDの監修&解説を担当した桜井ユタカ氏は、この曲こそがアイク&ティナのベストとライナーに書いているが、「A Change Is Gonna Come」に否定的な同氏がなぜこれを褒めるのかが理解できない。テンプスの「I Wish It Would Rain」、ビートルズの「With A Little Help From My Friends」は原曲の面影がないほどにアレンジされているが、相当にカッコいい。「Treating Us Funky」はちょっとシブめのファンキー・チューン。中盤のロックのカヴァーはお馴染みの曲ばかりなのでさておく。その間に挟まれたオリジナル「Workin' Together」もお馴染みの曲だが、何度聴いてもいい。カントリー/サザンソウル・スタイルの名バラード。「Tracks In My Shoes」はアイクがヴォーカルを取るロッキン・ブルース。ラスト4曲は全て他人の曲やカヴァー曲。横に揺れるグルーヴが気持ちいいファンキー・チューン「I'm Yours」、どこかオーティスのバラードを思わせる「Let Me Touch Your Mind」、珍しくティナとアイクがリードを分け合う「Games People Play」、クリス・クリストファスンの曲ながらソウル系の人に多くカヴァーされているバラード「Help Me Make It Through The Night」。

全体的にサザンソウル色の強い曲が多いので、数あるアイク&ティナの作品の中でも最もソウルの王道に近い作品集といえると思う。逆に言えば、シブめの曲に聞き物が多いCDなので、ロックのカヴァーなどの有名な作品を聴きたい人は、もっと入手しやすいベストを購入した方がいいだろう。
それにしても桜井氏も中途半端な選曲をしたもんだ。シングル・オンリーの曲はまだまだあるのに。


関連盤

Funkier_than_a_mosquetos_tweeterIke & Tina Turner 『Funkier Than a Mosquito's Tweeter』

「I Wanna Jump」収録



River_deep_mountain_highIke & Tina Turner 『River Deep Mountain High』


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March 19, 2006

Carlene Carter 『Live In London』 (DVD)

なんとー、カーリーン・カーターの映像があったー!
83年、ロンドン、マーキー・クラブでのライヴ。
カーリーンさん28歳、ニック・ロウと結婚してイギリスに住んでいる頃ですね。

carlene_carter_dvdCarlene Carter 『Live In London』 (DVD)








83年ということは、ちょうどアルバム『C'est C Bon』がEpicからリリースされた頃で、この日のセットリストも「C'est C Bon」からの曲が中心。
しかし、これが彼女の作品の中でいちばんつまらん作品なんだなー。
「最新シングルの曲をやるわね」といって始まる「Heart To Heart」も、なんでこんな曲シングルにするんじゃい!って程度の曲。

Cest_CbonCarlene Carter 『C'est C Bon』






carlenecarterそれ以前の作品が、ブリンズリー・シュウォーツだったり、ニック・ロウだったりがプロデュースした傑作ロックンロール・アルバムなのに、カーター・ファミリーの血を引いていたせいか、ラジオからも無視され、リスナーからもあまりいい反応は得られなかった。
そんなわけで、『C'est C Bon』はかなり試行錯誤したんでしょう。
そして、この2〜3年後にはニック・ロウとも離婚して、アメリカに戻ることになるわけですが、結局、ここから7年間はアルバムのリリースがなくなってしまうということで(この間はカーター・ファミリーのツアーに帯同していたらしい)、ある意味、ロックンロール時代の最後を捉えた貴重なフィルムと言えるかもしれない。
ちなみに、復帰後はロックンロール色は残っているとはいえ、ポップカントリー作品が多く、どれも傑作ばかり。
やっぱ、カントリーじゃなきゃダメってことなんでしょうか。
血は争えない。

さて、この映像。
冒頭に短いインタビューがあるが、英語のためさっぱり分からず(泣)
ライヴは、ほぼ1曲ごとに曲紹介を入れながら進行するが、テンポは悪くない。
でも、見ていてそれほど興奮するというわけでもない。
演奏もそれなりに上手いが、何か淡々としている印象を受ける。
まぁ、並のライヴですね。
しっかし、カーリーンさんのキレイなこと!
この人は本当に超美人だよねー。
それだけで十分(笑)
あとは衣装さえ手を抜いてなければー。
この服はけっこうひどいぞ。
声はけっこうかわいらしい感じだけど、そこはカーター・ファミリー出身、かなり歌えます。
やっぱ、時期が悪かったのかなー。
せめてThe Rumourとかのパブロック勢がバックをつけていれば・・・。
結局見どころは、そのまま曲の善し悪しで判断となってしまい、『C'est C Bon』以外の曲ということになる。
しかも、画質悪いなー。ブート並みとは言わないけど、オフィシャルならもうちょっと鮮明なの出して欲しい。
まぁ、動くカーリーンさんのビボーが拝めたということで・・・。
ちなみに、Amazonではリージョン1になってますが、僕の持っているのはリージョン・フリーでした。

今度はニック・ロウがプロデュースした『Musical Shapes』『Blue Nun』の時期か、90年代のカントリーの時期のライヴとかあったら出してくんないかなー。

      

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March 18, 2006

鈴木祥子 『鈴木祥子』

shoko_suzuki鈴木祥子 『鈴木祥子』






「リアルなもの」とは何だろう。それに完璧な答えを求めることは難しい。ひとことでいえば、現実その全てがリアルなものということになるのかもしれない。しかし、現実の中で生きている以上、現実だけを見て生きること、現実を全て受け入れて生きていくことも難しい。人間は夢を見る生き物だから。だから、現実逃避をしたり、「本当の自分探し」なんていう行動に走る。それは決して褒められたことじゃないかもしれないけど、ひとことにバカにすることもできない。そんなに強い人間はいない。


鈴木祥子は10年くらい前から、自分を確認する作業に入った。人間の中に潜む多くのタブーを言葉と歌で表現し、その生々しい歌の数々に耐えきれず、多くのファンが離れていったことだろう。しかし、彼女はその表現を止めなかった。最初の方こそはぎこちなさが感じられたものの、その音楽はどんどんスピリチュアルな感覚を増していった。2000年にメジャーとの契約が切れてからは、ライヴ中心の活動が続いた。そこで見せてくれた音楽的な高まりは、インディーズで発表されたライヴアルバムにその一部始終が収められているものの、その現場に立ち会ったものであれば、そのCDの内容には満足していないだろう。その空気の震えは、決してCDに刻み込むことはできないものだからだ。

このアルバムは、スタジオ録音としては5年ぶりとなるアルバムだが、リリース当初から賛否両論に分かれている。まずはあまりにも荒っぽい録音。荒っぽい歌や演奏。声がひっくり返ろうが、多少のミスをしようがおかまいなし。感触としては、メジャー最後のスタジオ盤、『Love, Painful Love』に近い。音抜けが悪く、デモテープ並みの音質。引っ込み気味の歌も、今のマスタリング技術なら何とでもなるはずだ。しかし、彼女はそれをしなかった。スタジオ盤なんだから、もうちょっと聴きやすいものを、というファンの声もあるが、これが彼女の求めたサウンドだったということだ。ひとことで言えばLow-Fiである。その意図はどこにあるのだろうか。

近年の彼女のオリジナル曲は、安易に共感することを許さない。あまりにも私的だったり、愛の意味を半ば暴走気味に追い求めたり。しかしそれは、理想を追い求めるものではなく、痛いほどに現実に向き合おうとする姿だった。だからこそ、かつて「戻るべき家」を探し続け旅をしていた彼女の姿に惹かれていた多くのファンは、目を背けなければならなかったのだ。探し求めた「家」で、彼女は「愛」の意味を確認する作業を始めた。矛盾する言葉が同じ意味として同居し、その答えと行く先を手探りで探しつづける彼女。そんな歌を「音楽」として楽しむことは、リスナーにとってはハードルが高い「作業」だ。しかし、このアルバムに収められた歌の数々を聴いて、気持ちの昂りを押さえられない自分を発見することができるし、決して共感しているわけでも同情しているわけでもないのに、なぜか涙が止まらなくなる。それが「リアルなもの」に触れた証なんだろうか。だからこそ、サウンドも着飾ったものであってはならないし、出来る限り生々しいものでなくてはならない。


余りにも重い言葉がここにはある。

"病院にいるおばあちゃんに訊いてみたいよ、"すべて忘れていくことは幸せですか?”(「忘却」)

"あの古い病院であたし、生まれたんだ、そこでお姉ちゃんが死んだんだ。
涙が出なかったんだ、すごく、突然だから。
あなたがいてくれたから、ぜんぶ、取り戻した"(「道」)

このアルバムには「あなた」が幾度となく登場する。この「あなた」とは誰なのか。それによって、ここに歌われている言葉の意味は大きく変わる。その答えははっきり示されていないが、僕には「自分の中にいるもう一人の自分=本音」という風に聴こえてきた。

"警告したいの、愛なんてないの。
軽蔑したいの、愛より深いの。"(「Love / Identified」)

ここにあるものは「魂に限りなく近づこうとするもの」なのか、「刹那的な諦観の快楽主義」なのか。その答えが出るのはまだまだ先だろう。


最後に、音楽的な観点から。
カーネーションと一緒にレコーディングされた「ラジオにように」の再演版とPatti Smithのカヴァー「Frederick」の意味が良くわからない。「ラジオにように」はあまりいい演奏とは言えないし、「Frederick」もほぼ完コピ状態で、スタジオで録る必要があったのだろうか。ハッキリいってライヴの方が出来がいい。逆に、「忘却」の楽曲としての完成度はすさまじいレベルに達している。この振り幅はなんとかならんものか。


大好きな人だけに、どうしても深読みがすぎてしまう。困ったもんだ。

     

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February 26, 2006

倖田來未 『今すぐ欲しい』

久々に買った倖田のCD。
自分で買ったのはデビュー曲の「TAKE BACK」以来だろうか。

レコード大賞をしたものの、受賞曲を誰も知らないなどと冷やかされたりもしましたが(すまん、オレも知らない)、そのキャリアを順調に伸ばしていることは確か。
実は、オレ、倖田にインタビューしたことがあるんだけど、「Come With Me」のジャケで下乳全開だったときも「全然恥ずかしくない、ユヨー」みたいな感じで、かなりチャキチャキサバサバした気持ちいい性格だったのが印象に残っている。今でこそ「エロかわ」などといわれているけど、ブレイク前から衣装よりも私服の方が派手といわれていた(傳田真央みたい)くらいだから、倖田本人としては、特別なことをしている気は全くないんだろう。第一、ティーン誌で「エロかわ」のキーワードが流行ったのなんて、もう2〜3年前のこと。それに、倖田がやってる「エロかわ」ってそんなにエロいか? エロとセクシーは違うのだよ。もともと歌がうまい人なんだから、もっとそこを聞いてやってくれ。

imasuguhoshii倖田來未 『今すぐ欲しい』

12週連続で限定5万枚のシングルをリリース、と。で、そのあとにそれをまとめたアルバムを出すという、2重に利益を出す姑息な作戦。まぁ、いいですけどね。その9枚目。


で、このCD。
すでにアナウンスされているように、Sugar Soulがインディーズ時代の97年にリリースした代表曲「今すぐ欲しい」のカヴァー。女の側からSEXを求めるという歌詞は当時としてもセンセーショナルだったし、ライヴではAIKO姉さん(=Sugar Soul)がフェラ○オの真似をするなど、過激な表現を売り物にしている曲ではあった。でも、この曲がMISIAの「包み込むように」などと同等にクラシックになったのは、それ以上に楽曲のトータルな仕上がりの良さが認められたということだろう。残念なことにSugar SoulがブレイクしたのはDragon Ashの降矢建志と共演した「Garden」だったので、この曲の存在を知らない人も多いかもしれない(ちなみに、「Garden」がリリースされた99年に「今すぐ欲しい」が収録されていたEP「Those Days」も再発されている)。これをきっかけに、ぜひオリジナルも聴いて欲しいと思う。

those_daysSugar Soul 『Those Days』

ワーナーの中のインディーズ的なレーベルとして立ち上げられたFlava RecordsよりリリースされたデビューEPの再発盤(ジャケ、中身は変わらず)。タイトル曲はユーミン「あの日に帰りたい」の英語R&Bカヴァー。ハッキリいってカッコわる! 「今すぐ欲しい」はCDのリリースから約半年後にアナログのみでシングルカット。


この曲を選んだのは、倖田=「エロかわ」というつながりもあるのだろうけど、過去にも中西保志の「最後の雨」や久保田利伸「夢 with YOU」をカヴァーするなど、倖田のカヴァーセンスはいい。しかも、大げさにいじらずに、原曲の良さを活かしたアレンジをするところも好感が持てた。そのスタンスは今回も同じ。
カヴァーというよりは「コピー」に近いけど、それは、アレンジ、トラックメイキングを担当したのがオリジナルと同じDJ HASEBE(Sugar SoulはもともとはHASEBEとAIKOのプロジェクトだった)だからだろう。なんかこういうところは、松任谷正隆がユーミン作の「まちぶせ」を三木聖子に歌わせた時に納得できなかった部分を石川ひとみのときに修正し、さらにユーミン本人が歌った時に別解釈を披露するといったしつこいまでのこだわりに近いものを感じる(「横浜ホンキートンク・ブルース」で、必ずエディ藩がしゃしゃり出てくるのとは意味が違う。あ、どーでもいいですね)。HASEBEがこの曲にそれだけ思い入れを持っていてもおかしくはないし、もしかしたら、AIKO姉さんが復活したあかつきには、再びSugar Soulの一員として「今すぐ欲しい」をリメイクしてくれるんじゃないか・・・と勝手な妄想まで膨らんでくる。

gentle_words 倖田來未 『Gentle Words』

カップリングに「最後の雨」を収録。Toni Braxtonの「Breathe Again」のビートをタイトにしたような感じで、安っぽさは否めないもののヴォーカルが活きた好トラック。


crazy_4_u倖田來未 『CRAZY 4 U』

カップリングに「夢 with YOU」を収録。これは残念ながら、オリジナルの久保田利伸に軍配があがる。




倖田に話を戻す。
歌の上手さは相変わらず。エロい歌詞をヘンに入れ込まずにさらっと歌っているのは好感が持てる。この曲のメロディからして、力をいれすぎるとトラックの持つスムーズな感覚が台無しになるからね。
今回はラップも自分でやってる。Sugar Soulのヴァージョンでは、ZEEBRAのヤル気全開ながらもロマンティックな言葉を織り込んだリリックが良かったのだが、今回はレーベルメイトでもあるHeartsdalesのJewelsがラップのリリックとディレクションを担当。英語がネイティヴなJewels姉さんらしい、アメリカンでオープンなエロエロリリックになってます。日本人特有の湿ったエロじゃなくて、生々しい言葉も妙にカラっとして聞こえるところがいい。"make me say「Yes! Yes! Yes!」ってまさに英語なエロ感覚。さすがに「I'm Coming」とは言わせなかったか(笑)でもねー、これは男のラッパーを絡ませてナンボの曲でしょう。ライヴで絡めないじゃん。どうせなら、ラップを2パート作って、最初が男、2回目が倖田ってのもよかったかもね。生々しすぎるか(笑)



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February 23, 2006

MEGADETH 『Countdown To Extinction』

オレがメガデスっておかしいですか?
これでも、デスメタルが"Burrn!誌で悪い点がつけばつくほど買い”と言われてた時代に、そういうのを聞きあさってた人間なんですけどね。
Incubus(昔の方ね)とかEntombedとかTerrorizerとか大好きだったんだから。

さて、メガデスといえば、まだデイヴ・ムステインとジュニアのプロジェクト・バンドのようだった頃のアルバム『So Far So Good ... So What!』などが高い評価を得ているわけですが、オレ的にはそんなに好きじゃなかった。
なんか軽いと感じてたんだよね。
しかし、1991年にメタリカが「スパイナル・タップ」みたい(ってネタはどのくらいの人がわかるんだろう?)な真っ黒ジャケの名盤『METALLICA』をリリースしてから、メタルシーンの旬なサウンドはスピードからヘヴィネスに移行していった。
メガデスもその流れに乗って(初期のメタリカをクビになったムステインにこんなこと言ったら殺されそうだな)、ファストナンバーを押さえ、ミディアムの曲が増えてきたのがこのアルバムから。

countdown_to_extinctionMEGADETH 『Countdown To Extinction』






前作の『Rest In Peace』から加入した元カコフォニーのマーティ・フリードマン(この頃はまだ演歌には出会っていなかった)とニック・メンツァの力も大きかったのだろう。
バンド全体のバランスもよくまとまり、楽曲もいい。
その上で、あのムステイン独特のひねくれたヴォーカルがしっかりと息づいている。
あの個性的なヴォーカルがこれだけ生きているのは、マーティのギタープレイがヴォーカルのバッキングのツボを心得ているからだと思う。
テクニカルなギタリストにありがちな目立ちがりなところもなく、出るところは出て引くところは引くという理想的なスタンス。
当時、こういうギタープレイヤーはなかなかいなかった。

個人的には、ムステインの言う"インテクチュアル・スラッシュ・メタル"なんてのはどうでもよかったのだが、ここにきて、サウンドが"インテクチュアル〜"とは離れていくと同時に、スピリットとしては逆にその言葉によりふさわしいものになっていったような気がする。
無謀で横暴といったあまりいいイメージのなかったムステインという男が信頼できるバンド・メンバーを得て、少しずつ変わっていった先にあったのがこのアルバムで聴けるような音楽的な充実だったと思うと、良かったと思うのと同時に、初期のメガデスで聴けたような荒々しさが恋しくも思えたりもするから不思議だ。
そしてそれらを聴き直してみると、やっぱり音楽的にはイマイチだなぁと思うのであった。
それでも、また聴き直したいと思うのだから、やっぱり何かしらの魅力があるということなんだろう。
結局は、メガデスというバンドの魅力は、デイヴ・ムステインという男の魅力だということなんだろうか。

  

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FISHMANS 『男達の別れ 98.12.28@赤坂BLITZ』

フィッシュマンズの再評価が進んでいるらしい。
かくいうオレも、ヴォーカルの佐藤くん(あえてくんづけにさせてください)が亡くなってからフィッシュマンズを聴き始めたクチ。もちろんリアルタイムで彼らのことは知っていたけど、食わず嫌いっていうか、ネオアコ系のバンドだと勘違いしてたんだよね、ず〜っと。
で、佐藤くんが亡くなって、何となく聴いてみようと思って買ったのが『98.12.28 男達の別れ』だった。個人的な趣味でライヴアルバムが好きということと、2枚組のライヴ盤ならベスト的な選曲だろうとこれまた勝手に思い込んで(それは当たっていたが)これを選んだ。

98FISHMANS 『男達の別れ 98.12.28@赤坂BLITZ』(CD)





それは当たりでもあったしハズレでもあった。
内容は素晴らしかった。ポップなメロディとダブの要素を取り込んだ音響。ベースが作り出していく音空間。すでにレゲエのダブとかON-U Soundとかも知っていたけれど、ここで聴ける音はそのどれとも全く違っていた。静かながらもその中には様々な感情が溢れ、あまりにも饒舌に語りかけてくる。どっしりと座った演奏の強靭さは、このバンドの信念をハッキリと伝えていた。これこそが本当の音楽。いろいろな時代に本物の音楽があっただろうが、90年代の日本で最もリアルなサウンドを作り出していたうちの1つが、このフィッシュマンズだったのだろう。
では、なぜハズレと書いたのか。
このアルバムがあまりにも素晴らしすぎて、過去の作品を聴く気が起きなくなってしまったからだ。オレにとってのフィッシュマンズはこの1枚で充分。今でもその気持ちは変わらず、彼らのスタジオアルバムは1枚も聴いたことがない。まぁ、いつか聴く機会があるだろうと、のんびりと構えていることにする。

98FISHMANS 『男達の別れ 98.12.28@赤坂BLITZ』(DVD)







しかし、このDVDの出現は、オレにとっては大事件だった。
もともと映像の発売を予定していなかったため、この日の撮影は、たった3台のカメラに収められているだけだった(しかも画質からしてハンディカメラかもしれないな)。商品として発売するのであれば使われないであろうノイズだらけの画像やブレた場面、おかしなつなぎが何ヶ所かあるのはそういった事情からだろう。しかし、そんなことは全く気にならない。
何のことはない淡々としたステージング。しかし、メンバーの演奏からは、ものすごく気合が入っていることが見て取れる。
そして、曲間のちょっとしたブレイクの間も、その空気は途切れることはなかった。メンバー紹介から始まるオープニングからラストの「Long Season」まで、CDで聴けたあのサウンドはこうやって紡ぎ出されていたのかと、目に焼き付けていく。CDで聴くよりも、歌詞の内容が頭に入ってくるのは何故だろう。彼らの魅力はサウンドだけではなく、佐藤くんの書く歌詞のドラマも大きな魅力だったということに今更ながら気付かされる。
後で知ったことだが、この日のタイトルはベースの柏原譲がこの日をもって脱退するということで付けられたものだった。それがこの3ヶ月後に佐藤くんが亡くなってしまうなんて・・・。あまりにも悲しい"出来過ぎ"だ。
結果的に、彼らのラストライヴとなってしまったこの日の公演を完全収録したこのDVDは、まさに彼らが最後に放った最高の輝きだったといっていい。

MCで「今日はたくさんやります」と言った佐藤くん。
ラストの40分にも及ぶ「Long Season」の演奏の余韻はいつまでたっても終わることはない。今も、あのシーケンスフレーズのリフレインと残響音は耳に残っている。
「くちずさむ歌はなんだい?/思い出すことはなんだい?」
僕らはまだ「半分夢の中」にいるような気分だ。
長い季節はまだ終わらない。

  

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