アメリカン・アイドルのシーズン6で3位になった実力者メリンダ・ドゥーリトルのデビュー・アルバムがやっと完成。
実は、この番組は見たことがないんだけど(Youtubeで部分的に見る程度)、彼女のようなルックス的には恵まれていない(失礼)シンガーでも、実力や性格などでしっかりデビューにまでこぎ着けられるというのはいいね。日本のオーディション番組みたいに、歌唱力よりもルックスや話題性(家庭環境だなんだとか)で売っちゃおうってわけじゃないからね。メリンダのように、オーディエンスから圧倒的に支持される出演者も多い。Youtubeにはメリンダの出演シーンもいっぱいうpされてるから、チェックしてみよう。
さて、そんなわけで、僕はアメリカン・アイドルの出演者だったからとか、そういう理由でこれを買ったんじゃありません。ジャケ買いです(笑)でもね、こんだけネットが発達して、事前に情報が出回っているのにジャケ買いしたくなるって、最近では本当に珍しいんだよ。特に新譜ではね。決め手は、メリンダの姿と成りがこのモノクロの写真のジャケットの、まるっきり60年代な雰囲気にぴったりだったってこと。きっと、"そういう歌を歌える"と確信したんだな。
メリンダはもともとバックコーラスの仕事をしてた人で、錚々たるメンツが並ぶ。ざっと見積もっただけでも、Michael McDonald、Kirk Franklin、Aaron Neville、BeBe and CeCe Winans、Alabama、Jonny Lang、Vanessa Bell Armstrong、Anointed、などなど。ロックからR&B、ブルースにカントリー、なんでもゴザレ。でもやっぱり目立つのはゴスペル。カークはもちろん、ビービー&シーシーなんて大物、ソウルからゴスペルまでを行き来するヴァネッサ・ベル・アームストロング、ここ15年くらいの人気クループ、アノインテッド。これだけの人たちと仕事をしてきたってだけでも十分実力は認められているわけだけど、やっぱり自分の歌を歌いたかったんだろうね。


Melinda Doolittle「Coming Back To You」
(2009)
Hi-Fi Recorgings
1曲目から、いきなり古くさいソウルテイストがぷんぷんしてて、今の時代にプロがこれをやるってパロディ以外の何ものでもない。普通ならね。そう感じさせないのは、やっぱりメリンダの歌。上手いけどやたらと技巧に走りがちな最近のシンガーと違って、心があるのね。だから上手いのに必要以上に技巧は使わない。だから、シンプルなサウンドが似合うんだね。
今回歌われている13曲は全部カヴァー。ソウルのカヴァーかと思いきや、実は相当におかしな選曲で。サウンドは60年代以前のソウル〜ポピュラー路線に統一されてるんだけど、オリジナルの出自をみるとびっくりというのが多い。実は90年代以降の曲が多かったり、第一、ソウルやR&Bの曲が少ない。新しいと思った曲でも、実はその前があるのかもしれないけどね。やっぱ、アメリカン・アイドル出身で、これが1発目ってことで、まだまだいろんな可能性を探ってるのかも。ジェニファー・ハドソンみたいなことだって起きうるわけだし。ただ、この選曲はどう考えてもセンスがいいとは思えない。

1.Fundamental Things (Bonnie Raitt)
ボニー・レイットの1998年のアルバム「Fundamental」のオープニング・トラック。リズムパターンからしてボニーのお得意パターン。あんまりいじってないけど、歌はバッチリソウルフルでいい。
2.It's Your Love (Shirley Edwards)
60年代にShrine Recordsからリリースされた、シャーリー・エドワーズの盤がオリジナル。ソウルマニア泣かせの名曲です。オリジナル・シングルはレア盤として有名。こんな曲が突然入ってるのもヘンなので、ほかに有名なカヴァーとかがあるのかも。UKのACEというレーベルから出てる「SHRINE: The Rarest Soul Label Vol.2」というCDで聴けます。が、なぜかAmazonには無し。珍しいもんではないので、輸入盤屋で普通に売ってると思います。
3.Coming Back to You (Macy Gray)
なぜかメイシー・グレイの曲。しかも、2006年の「Deja Vu」という映画の主題歌?で、サントラに収録されているようなのだが、CDの存在が確認できず(Youtubeでは聴けます)。しかも、アルバムのタイトル曲になってます。どういう絡みがあるの?

4.Declaration of Love (Celine Dion)
なんと、セリーヌ・ディオンのカヴァー。アルバム「Falling Into You」の中でも目立たない曲。なんか、あんまりコメントしたくないな(笑)

5.The Best of Everything
有名なソングライターSammy Cahnの曲で、1959年の同名映画の主題歌。アカデミー賞の音楽部門でオスカーを獲得した名曲。いわゆるスタンダード曲ですね。シナトラとか、ジョニー・マティスなんかが歌ってます。

6.Wonderful (Aretha Franklin)
アメリカン・アイドルでもアリサの「Since You've Been Gone」を歌ってたから、アリサのカヴァーをするのは分かるんだが、なんとアリサの引退作と言われている2003年のアルバム「So Damn Happy」からの選曲。

7.Dust My Broom (Robert Johnson)
なんと、ロバート・ジョンソンのブルースですよ。しかも、超有名曲。アレンジは相当変えられてて、あんまりブルースな感じはしないけど。どういう基準で選んでるんだろ? カサンドラ・ウィルソンがサン・ハウスを歌ってるからとか、関係ないか。

8.I'll Never Stop Loving You (Doris Day)
これも、サミー・カーンの曲。1955年の「Love Me or Leave Me」という映画の曲で、オリジナル・シンガーはドリス・デイ。もうストリングス入っちゃって、大スタンダードな世界。エッタ・ジェイムスあたりでも意識したんだろうか?

9.I Will Be (Wynonna Judd)
ポップ・カントリーの大物、ワイノナ・ジャッドの1993年アルバム「What the World Needs Now Is Love」に収録。そんなに大きくアレンジを変えた印象はなし。

10.If I'm Not In Love (Dawn Thomas)
これは、このブログでもずいぶん前に紹介しましたね(コチラ)。そう、伊藤由奈のREIRA starring YUNA ITOとしてのデビュー曲(つまり、「NANA」です)、「Endless Story」のこと。もともとはこの曲を書いたDawn Thomas(aka Constant Change)が1993年に「Indecent Proposal」という映画のサントラで歌ってた曲。ここではいちばん有名なカントリーのFaith Hillのヴァージョンでご紹介。

11.Walkin' Blues (Robert Johnson)
ロバート・ジョンソンをもう1曲。これまた有名な曲ですな。これはロックバンドなんかもよくやる8ビートが似合う曲。スウィングさせてもいい。ストレートにソウルな感じでカヴァーしてます。

12.We Will Find a Way
出所不明。曲を書いたSusan Sheridanはイギリスの女優/ナレーターさんで同名の人がいるんですが、関係あるのかな? ストレートにソウルを感じさせる好トラック。

13.Wonder Why (Jane Powell)
3度サミー・カーンの曲。なぜそこまでこだわる? 1951年の映画「Rich, Young and Pretty」からの曲。劇中でジェーン・パウエルとヴィク・ダモーンが主演した歌ったのがオリジナル。これもアカデミーにノミネートされたが、受賞はできず。

Bonus:「Through the Fire」(Chaka Khan)
んで、どうやらWalmart(アメリカの有名なスーパーマーケット・チェーン)での販売分のみ、ボーナストラックでシャカの名バラード「Through the Fire」のカヴァーが入ってるらしいんだよね。うおー、聴きてー。
プロデューサーのMichael ManginiはJoss Stoneを手がけていた人。なるほどね。ドラムスは全曲あのCindy Blackmanが叩いている。
とにかく聞きごたえはある。で、これが日本盤の予定がないんだな。やっぱ日本ではルックスがないとダメなの?それでも売るんだ!という根性を、日本のレコード会社も見せてほしいです。
Recent Comments