Johnny Cash 『At San Quentin』
数年前までは、日本でカントリーというと、C&W(カントリー&ウエスタン)や昔のダサい音楽というイメージが強かったと思う。しかし、近年は<スワンプ>やら<フォーキー>やらの人気、そして、何よりもグラム・パーソンズの影響で、カントリーという音楽もずいぶんと認知されてきたようだ。
しかし、何かが違う。
日本人の場合、どうしても<音>から入る傾向がある。まぁ、英語が苦手な日本人。それは仕方ない。オレもそうだし。オレは超がつくほどグラム・パーソンズの大ファンだし、エミルー・ハリスを知ったのはもう20年も前の高校時代だった。だからカントリーには最初から抵抗はなかったし、ポツポツと買ってはいたのだが。
Johnny Cash 『At San Quentin』
でも、カントリーという音楽の本質はそこじゃない。このCDを聴いて思い知らされた。
ジョニー・キャッシュが1969年に行った刑務所慰問ライヴのコンプリート版。
刑務所慰問ライヴ自体は珍しいもんじゃない。B.B.キングなんかもそういうアルバム出してるよね。
ここで聴けるサウンドはシンプルそのもの。耳の肥えたリスナーには、音だけなら退屈といわれても仕方ないかもしれない。カントリーにもいろいろ種類はあって、ナッシュヴィルの音だ、ベイカーズフィールドサウンドだ、ウッドストックだ、とかそんなのはどうでもいい。ここにはシンプルな3コードの曲に力強い歌があるのみ。それがなぜこんなにも激しく感情を揺さぶるのか。それは、やっぱり歌詞なのだ。
このライヴが行われたサン・クエンティンという刑務所は、全米でも特に指折りの犯罪者が集めれた刑務所だという。
そんな場所で、受刑者を目の前にして、
「サン・クエンティン、いったい何の役にたってるのか
刑を終えたら、生まれかわってるとでも思うのか
おまえなんか朽ち果て地獄の業火に焼かれてしまえ!」
と歌う。
この瞬間の受刑者たちの熱狂ぶりは、CDにも刻みこまれている。ライナーノーツにも書いてあるが、それは、今にも暴動が起きそうなほどだったという。しかし、それは決して受刑者の味方であるとか、犯罪を賛美したりとかいうわけではない。
ジョニー・キャッシュ自身、7度もの投獄経験があるだけに、受刑者の気持ちがよくわかるのだろう。それを代弁しただけだ。だから、彼の歌は、最初はカントリーに興味がなかったという受刑者たちをも熱狂させたのだ。
彼の音楽には、ものすごいカリスマ、人間としての巨大な器が刻み込まれている。それを理解するためには、歌詞をひもといていくしかない。
残念ながら、日本ではジョニー・キャッシュの偉大さは全く知られていないし、彼の伝記映画「I WALK THE LINE」も、アメリカでの大成功とうらはらに、それほど話題になっていない。
それでもその映画化を記念してか、日本でもこうやって彼の代表作がCD化された。そして、歌詞、対訳とともに、ライヴ中のMCまでがすべて記載されている。これらを読みながらこのCDを聴く事により、なぜジョニー・キャッシュが偉大なのか理解できるだろう。
レイ・チャールズは、「歌詞のストーリー性が人を感動させるんだ」と、カントリーミュージックの本質を見事に言い表した発言をしているが(映画「Ray」の中にも出てくる)、カントリーの本当のすごさはまさにそこにある。
パンク・ロックがいかに過激なことを歌っていようとも、プロテスト・ソングがどんなに過激な政治的メッセージを放とうとも、普通の日常の中で普通に人殺しの歌と美しい愛の歌と賛美歌を同居させて歌ってしまうカントリーには勝てっこない。
今、歌詞と歌の力というものを見直すときが来ていると思う。
■関連盤
Johnny Cash 『At Folsom Prison』
これが初の刑務所慰問ライヴ盤。
こちらも名作。
Johnny Cash 『The Essential Johnny Cash』
Columbia時代の2枚組ベスト。

『Walk The Line』
実はまだ見てません。早く見よう。








このアルバムにはリアルタイムで聴いていないと分からない要素がたくさんある。 



ちなみに、<TANAKA>とでっかく名前が出たことでミョーに人気のダンサーのTANAKAさんですが。日本人だと思ってる人もいるようですが、BRYAN TANAKAさん、 ハーフです。実はiPodのCFで踊っているのがこの人。向こうでもけっこう人気のある人みたいですね







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